マイルス・デイビス「Kind of Blue」★★★★★

Kind of Blue


何でこんなに寒いのか。そして何でこんなに雨が続いているのか。微妙に憂鬱になりそうな日々が続いている。それなのに仕事がたまってきてしまった。やりたくない、寝たい、ウィスキーを飲んでボーッとしたい。そんな天気と気分にぴったりなのがマイルス・デイビスMiles Davis)の「Kind of Blue」だ。


ぴったりと言っても、憂鬱な気分を晴れ晴れさせてくれるわけでも、仕事のやる気のなさを解消してくれるわけでもない。ただ単にそういう気分にぴったりと合うだけである。まったりと、ゆっくりと、リラックスモードへといざなってくれる。これを聴いていると、しずかなうねりのようなものが僕の中に入ってきて、ゆらゆらと僕を優しく揺らしている、そんな気分になる。だから、これから仕事をしようなんていうときにこれを聴いてはいけない、絶対に。


今、このアルバムを聴きながらこれをタイプしているけど、もうこのタイプすらやめて、目を閉じて、マッカランでも飲んで、さっさと寝てしまいたい気分だ。


このCDはどう考えても車で聴くタイプの音楽ではない。あと、iPodで聴くようなタイプの音楽でもない。人でがやがやしている環境で聴くタイプの音楽でもない。一人、あるいは静かな環境で、何も言わず、何もせず、何も考えずに聴くのが正しい聴き方であるように思える。★を5つ付けたのは、そういう環境において聴いた場合はピカイチであるという意味だ。


全体的にどの曲も基本的にベースラインというか基本的な部分では同じパターンあるいはリズムが繰り返される。そこにマイルス・デイビスのトランペットがふんわりと、しかし確かな存在感をもって重なってくる。鼓笛隊のように力強く吹きまくっているという印象はまったくない。抑えたトランペットだ。音数も多くない。それが何とも言えずに心地よいサウンドを作り出している。


雨の日の(もちろんそうでなくても)一日の終わりに聴きたい名盤である。