日本の美術館について考える

僕は美術館に行くのが好きなのだが、ヨーロッパの美術館に行ってショックを受けたことがある。まず、そこがおおむね明るい空間(自然光多し)であること、そして、写真等の撮影が自由なところが多いこと、最後に、模写するのも自由であるということ。


特に最初の「明るい」ということはとても大事だと思う。日本の美術館は全体的に総じて暗く、絵を照らす照明も赤っぽい電球色のことが多いのではないだろうか。


僕がその昔「タンギー爺さんの肖像」というゴッホの絵をたしか国立西洋美術館に見にいったとき、ポスターであらかじめ見ていた印象とは異なって、実物はとても暗く思えた。だからけっこうがっかりした。でも、今思うと暗く思えたのは美術館のせいで、館内が暗く、電球色で照らされていたからではないかと思っている。そんなわけで、その時に美術で提出するレポートに「ポスターのほうが実物より色が良かった」などと書いて提出したところ、お叱りのコメント付きで返ってきた(^^;。いずれにしても、そのおかげで「ゴッホ=暗い色」という印象が付いてしまったことは間違いない。


ところがである。パリのオルセー美術館に行ったときに、僕はゴッホの絵にものすごい衝撃を受けた。色が明るいのである。鮮やかなのである。今まで僕が知っていたゴッホとは全然別のゴッホがそこにあった。もちろん、そこに展示されている絵は有名なものばかりだから、本などでは見たことがあるものだったが、実物の色はそうした本の印刷とは比べ物にならない輝きを放っていたと言っていい。


そこで撮った写真などを見返してみると(撮影は全然自由だったから撮りまくった)、館内がとても明るいことが分かる。しかも、自然光に近い「白い明るさ」だ。写真を見ると、自然光のようだ。


そういうのを見ているから、日本の美術館に行って毎回思うのは「暗い、暗すぎる!」ということだ。光が適度に当たっていなければ絵画からその本来の色彩を知ることはできないではないか、と思うのである。電球色のような赤い光を当ててしまってはますます色が分からなくなるではないか、と思うのである。こういうところを、日本の美術館の方はいったいどのように考えておられるのか一度是非聞いてみたいと思う。


写真撮影禁止は分からなくないが、模写禁止というのもけっこうひどいなぁと思う。この国の芸術家を育てようという気がないのだろうか?