寝静まった世界を楽しむ

夜の3時ぐらいまで仕事をしていて、さあ寝ようというときになって小腹がすいてしまったので、何かコンビニで買って食べようと思い、外に出た。そこで僕が見たのは目を刺すかのように鋭く燦然と輝いている月の光で、その光は空気中のもやによって拡散し、幾重にもそのまわりを囲っていた。その時は、ちょうど雨が上がって雲が晴れたばかりのときだったようで、もやは多少残っているものの、空が澄んでいることは月の輝きでよく分かった。


半月ほど前に、友人が4時ぐらいに目が覚めてしまったので、朝日を見に行こうと思って三浦半島の先のほうにある海岸に行ってみたらしい。ちょうどそのぐらいの時間というのは、ほとんど誰も外におらず、ましてや海岸になど誰も出ていない。


その海岸で波の音を聞くのは、ちょうど石庭を前にして一人たたずむのと似ているかもしれない。彼は、波が沖合から海岸に向かってきているというよりは、端のほうからその中心部に向かってくずおれていくものであることが分かったという。波の音は漠然と海から聞こえてくるのではなく、横のほうから明確な定位を持って移動していたという。


そんなことを感じながら、ごろんと海岸に仰向けになると、そこに広がっていたのは、文字通り“降るような”星空だったそうだ。アブラムが星を数えたような星空だった、と言う。海辺の砂粒のような。


寝静まった夜中の世界もおもしろい、と思った。