犬は喜び、僕は考える

やたらと冷えた昨日の夜に車に乗っていたら、ものすごくうれしそうに走り回っている(もちろん、つながれているロープの範囲内で、ということだが)犬がいた。そういうシチュエーションで思い浮かぶのは「犬は喜び庭かけまわり、猫はコタツで丸くなる」というあの歌である。うれしそうにかけまわっている犬を見ていたら、あの歌で歌われている犬もこんな感じだったのかな、と思ったのだけど、それと同時にふと頭をよぎったことがあった。


それは、「雪が降ると本当に犬は“喜んで”庭をかけまわっているのだろうか」ということだ。もしかすると、寒さに対するアプローチ(という表現は適当ではないかもしれないが)の仕方が猫と違うというだけのことではないだろうか、と。つまり、猫は暖かい場所に身を置き表面積を小さくすることによって寒さから身を守るが、犬も方法こそ異なるものの体をさかんに動かすことによって寒さから身を守ろうとしているだけかもしれない。それを人間のフィルターを通すことによって、勝手に「喜んで」という感情が付加されてしまったのかもしれないではないか、と思ったのだ。


でも、僕はこれまで猫は何度か飼ったことがあるが、犬を飼うという機会に恵まれてこなかった。だから、こうした推論には何の根拠もない。


では、仮に本当に喜んでいたとして、犬はなぜそんなに寒いのがうれしいのであろうか。とりあえず、ただ単純に寒いという状態が好きということであれば、もはや僕の考えの及ばない事柄になってしまうので、ここではその可能性は考えない。


犬を観察して気づくのは、彼らが異常とも思えるほど散歩が大好きで、それにあらゆる情熱を傾けていることである。なにがあってもかかさない、雨が降ろうと、爆弾が降ろうとそうなのだ。三度の飯より散歩といったところかもしれない。それは人間の食欲や性欲のようなものなのだろうか(性欲より強いか…)。


それと同時に思い浮かぶのが、犬は汗による体温調節ができないという事実だ。夏なんかに見ると、もうほんとうにつらそうに舌を出してはぁはぁ言っているではないか。


そうしたことを総合して考えると、犬は普段の散歩では自分が本来したいと思っている運動量をこなせていないのではないか、と思えてくる。それだけの運動をするには暑すぎるからである。仕方なく彼らは、舌を出すことによって体温調節ができる限界のラインまでに自分の散歩における運動量を抑えている。しかし、寒くなり、雪が降るとそうした理不尽な限界は取り除かれることになる。彼らは自分の思う存分運動を楽しむことができるし、散歩を楽しむことができるのだ。


つまり、雪は彼らを普段の抑圧から自由にしてくれる解放者なのだ*1

*1:言い方を変えれば、単に暑いのが苦手ということになるが、そう言っては身も蓋もないので(^^;)。